今回紹介する作品は、『ディアマンティーノ 未知との遭遇』を手掛けたポルトガル在住のガブリエル・アブランテス監督による『アメリアの息子たち』。
自身の知らない運命に翻弄されていく男性と、呪われた血縁関係を持つ家族が果たした恐怖の再会のさまを描きます。
世界的に賛否両論評価を受けた作品ながら、非常にユニークな視点で構築された物語は、一見の価値がある作品であるといってよいでしょう。
【概要】

生き別れた母と双子の弟に再会した青年が逃れられない運命に巻き込まれていく姿を描いた、ポルトガル発のホラー映画。
キャストには『ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え』『スキャンダル』のブリジット・ランディ=ペイン、『ディアマンティーノ 未知との遭遇』で主演を務めたカルロト・コッタ、『犬の裁判』のアナベラ・モレイラ、『ミセス・ハリス、パリへ行く』のアルバ・バチスタ、『愛、アムール』のリタ・ブランコらが名を連ねています。
原題:A Semente do Mal(英題:Amelia’s Children)
監督・脚本:ガブリエル・アブランテス
出演:ブリジット・ランディ=ペイン、アルトゥールカルロト・コッタ、アナベラ・モレイラ、アルバ・バプティスタ、リタ・ブランコ
2024年公開/91分/PG12/ポルトガル
配給:Cinemago
劇場公開日:2025年10月25日より全国ロードショー!
【あらすじ】
ニューヨークに暮らす青年エドは、誕生日に贈られたDNAキットをきっかけに、かつて
失われたはずの「家族」、そして“もうひとりの自分”──双子の弟の存在を知る。
真相を求め、恋人のライリーと共に辿り着いたのは、ポルトガルの森深くに佇む古びた大
邸宅。そこには封印されたままの幼少期の記憶、誘拐の痕跡、そして血にまつわる不吉な
因習が静かに息づいていた。
だが、屋敷の奥でふたりを迎えたのは、妖しき支配者アメリアと、常軌を逸した“家族の儀式”。血は絆であると同時に、呪いでもある──。
逃れられぬ運命の鎖が今、音を立てて軋みはじめる。(プレス資料より)
【『アメリアの息子たち』の感想・評価】
絵画を思わせる緻密な構図で描かれた「モンスターの愛」
作品を手掛けたガブリエル・アブランテス監督は、映像の世界に入る前に「画」に興味を持ち、美術学校で絵画を学んでいた経歴を持った監督。
本作もシーンの一つ一つに画のような趣のある構図が感じられるものとなっています。ニューヨークの喧騒を離れ、ポルトガルの郊外にある古い邸宅を舞台に展開していく物語は、どこか非現実性すら覚え、一見シンプルにも見える物語の中で、真理が明らかになるまでの空気感に独自のものが見られます。
一方、本作の物語構築に関しアブランテス監督は、フランケンシュタインなどの「モンスターが愛を求める」というアイデアをベースにしたと語っています。
本作に登場するモンスターは「魔女」的な、はっきりとした存在ではありませんが、物語で語られる愛の求め方、愛の対象はこの「モンスターの愛」というモチーフの裏にある「その希望は認められない」という意向を物語の裏にしのばせ、その禁断の行為により見えてくる恐怖を描いた作品であると見ることもできます。

物語の評価意見としては賛否あるものの、非常にユニークなテーマを扱った作品である点には要注目。本作は、いわゆる近親交配を交えた登場人物たちの家族、一族関係に物語の要点が隠されています。
近親交配というえば、たとえばエジプトなどの古代における豪族たち。その研究の中では、近親婚が多く行われていたことが推測されています。
その根拠として考えられるのは、やはり「自身の家系、種族が最も優れたものである」という思いより、他の家系の血を自身の家系に注ぎたくないという考えから、という説など。
こういった例と比較すると、本作は自分の知らない、古くからの閉塞した一家の事情に巻き込まれた一人の男性の物語と見ることもできるわけですが、解釈を広げれば閉塞的、慣習的に続いてきた思想に対する恐怖、危機を訴えるようなメッセージも見えてくる物語ともいえるでしょう。

本編では特に過激な性描写などがあるわけではありません。しかしその不気味な雰囲気の中で「何が変なんだ?」とあるはずのない違和感に、猛烈に不安な気持ちをあおられ、混乱していくエドとライリーの姿が非常に印象的。
そしてクライマックスで全てが明らかとなり、驚愕の真実が突き付けられるショッキングな展開。ここで一気に恐怖の全貌が明らかとなっていきます。
派手なインパクトのあるものではありませんが、ゆっくりと体に染み込んでくる不快感、違和感など、非常に高い映像的センスを感じさせる作品であるといえるでしょう。


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