※本記事は2025年3月5日に、以下URLにて公開しました。
「horrortopics.com/post/r-themousetrap」
今回紹介する映画は、あの世界に愛されたキャラクター、「ミッキーマウス」がテーマ。ジェイミー・ペイリー監督によるホラー映画『マッド・マウス ミッキーとミニー』であります。
1928年に公開されたウォルト・ディズニー社の短編アニメ『蒸気船ウィリー』が、2024年1月1日に公開から95年経ったことで、著作権が切れパブリックドメイン化したことを受け、作られたというこの物語。
「ミッキーマウス」が人を殺しまくるという強烈なテーマの作品ですが、物語の根底を理解することでより深いメッセージ性、裏に隠された心理を知ることができる、製作者のクレバーさが感じられる作品であります。
※なお、本記事には広告プロモーションが含まれます。
【概要】

ミッキーマウスを凶悪な殺人鬼として描いたスプラッター・ホラー。
『デスNS インフルエンサー監禁事件』のジェイミー・ベイリーが監督を務めました。また同作で脚本を務めたサイモン・フィリップスが本作でもタッグを組んでおり、脚本、出演を果たしました。
主人公アレックス役を『エア・ロック 海底緊急避難所』のソフィー・マッキントッシュが務めています。
2024年製作/94分/R15+/カナダ
原題:The Mouse Trap
日本公開日:2025年3月7日
【監督・脚本】
ジェイミー・ベイリー
【出演】
ソフィー・マッキントッシュ、マッケンジー・ミルズ、マイクサイモン・フィリップス、カラム・シウィック、ベン・ハリス、ダミール・コビッチ、ニック・ビスクペック、アレグラ・ノシタ、ケイリー・スタイルズほか
【あらすじ】

21歳の誕生日を迎えるアレックスは、当日にアルバイト先のゲームセンターで店長から残業を頼まれ、夜遅くまで働くことになってしまいます。
ひとりきりの店内。そこに不気味な人影を目撃し恐怖心を募らせるアレックスでしたが、その正体は彼女のために企画してくれた誕生日祝いのサプライズパーティを催す旧友たち。
それを知って彼女はホッとします。
ところがその一方で、彼ら以外の怪しげな人物が場内に現れ彼女たちを襲い、その目的も分からないままに次々と血祭りにあげていくのでした……。
【『マッド・マウス ミッキーとミニー』の感想・評価】
1.「物語の前提を理解する必要性」敢えてチープな雰囲気を漂わせる意図

全体に漂うチープな雰囲気。何も考えずにこの作品を見ると、多くの人は「単なるB級作品」などと決めつけてしまい、低い評価をつけてしまうかもしれません。実際、批評家陣からはかなり低い評価を受けている傾向にある様子です。
その意味で、本作は作品を見る前に一つの理解をおこなった上で作品を見る必要があるともいえます。
その理解とは、「ミッキーマウス」というキャラクター、ディズニー作品にまつわる物語である、ということ。このことは、オープニング時にまるで『スター・ウォーズ』の初作のオープニングで示された解説文の表現をもじったような導入で示されているもので深く感じ取ることができるでしょう。
また本作の原題は『The Mouse Trap』ですが、実は2024年の初公開の際、原題は『Mickey’s Mouse Trap』であったものの、以後現在のタイトルに変更されました。
オープニングの解説文といい、このタイトルの変更など、「ミッキーマウス」というキャラクター自体というよりはこのキャラクター、フランチャイズが社会に与えたさまざまな影響を、ある意味斜め上の視点から眺めた上で作り上げたという方向性が強くうかがえるところであります。
ホラージャンルとしては、ある意味憑依系ともいうべきホラーでしょうか。細部の作りには、その意図は見えないにもかかわらずどこかコメディーっぽい雰囲気が漂っていますが、その安っぽさには、なにかを狙ったような意図が見えてくるようでもあります。
そこにはこのキャラクターのパブリック・ドメイン化を狙って作ったテーマであることが強く感じられます。物語で出てくるハプニング、展開には、まさにそれをにおわせるギミックがあちこちに仕掛けられていることが見えてきます。
「ミッキーマウスのマスクを被った連続殺人鬼」をどのように描くか、がこの作品のポイントですが、そこにはどちらかというとグロテスクさ、ホラーというよりは風刺的、批判的なメッセージ性を非常に強くおぼえさせるものであります。
2.敢えて作った「安っぽさ」がもたらすメッセージ性の強調性
本作の監督、脚本は『デスNS インフルエンサー監禁事件』のジェイミー・ベイリー、サイモン・フィリップスによるタッグ。
『デスNS インフルエンサー監禁事件』は、インスタグラムで「いいね!」を多く獲得する一人の女性が、謎の男に誘拐・監禁され遭遇する恐怖の出来事を追う物語でありますが、その根底にはやはりSNS至上主義的な現代の問題提起的メッセージを、明確に示しています。
この作品もどこかチープな雰囲気が漂う作品であり、このタッグが作り出す作品の、一つのスタイルではないかとすら思える作風であります。「もっとうまく、クオリティーの高い作品は作れるのではないか」と思わせるほどの安っぽさでありますが、この安っぽさがあるからこその、批判的なメッセージは余計に鮮明になってくるようにも感じられます。

本作にもこの雰囲気はそのまま受け継がれているようなイメージ。
このチープさにより「ミッキーマウス」が殺人鬼、というよりは「ミッキーマウス」を構成するさまざまな要素が若者にダメージを与えている、みたいな奥深いところにある真理を感じ取ることができます。
「ミッキーマウス」というポップなキャラクター、そしてこれにまつわるスプラッター・ホラーというキャッチーな柱がありながらも、意外に見るためにはそれなりの理解が必要となるなどハードルの高さも見えてくる作品であるといえるでしょう。
監督はデビュー作でホラー作家ラムゼイ・キャンベルの長編ホラーを原作とした映画『ネイムレス/無名恐怖』を発表し高い評価を得ていることもあり、物語の咀嚼という点においても優れたセンスを発揮できるクリエイター。その意味では本作も独特の解釈で映像化を実現した作品であるといえるでしょう。
Title: “The Mouse Trap” (Japanese Title: Mad Mouse: Mickey & Minnie)
Directed by Jamie Bailey and written/starring Simon Phillips—the duo behind Influencer (Japanese Title: Death NS)—this slasher horror film was created following the public domain release of Disney’s 1928 short Steamboat Willie on January 1, 2024.
On the surface, the plot follows a young woman named Alex, who is trapped in an amusement arcade on her 21st birthday and hunted by a serial killer wearing a Mickey Mouse mask. While critics have given it low ratings due to its seemingly cheap, B-movie aesthetic, this review argues that the film requires a deeper understanding of its context.
Rather than just aiming for pure gore, the intentional “cheapness” and satirical tone serve as a sharp critique of the franchise’s massive societal influence. Just like their previous work Influencer, which tackled the dark side of social media, Bailey and Phillips cleverly use this cheesy slasher setup to deliver a deeper, subversive message about how pop culture icons impact the youth.
こんなセレクトもいかが?
1)『デスNS インフルエンサー監禁事件』 (2022)
本作の監督ジェイミー・ベイリーと脚本サイモン・フィリップスのタッグによる前作。SNS至上主義に警鐘を鳴らす現代的なメッセージ性と、彼ら独特の「一見チープながらも芯のある作風」の原点がここにあります。『マッド・マウス』の風刺精神が気に入った方は必見のシチュエーションスリラーです。
2)『プー あくまのくまさん』(2023)
児童文学のパブリックドメイン化によって生まれた「狂気のスプラッター映画」の先駆けといえばこれ。世界中を震撼させた『プーあく』と、今回の『マッド・マウス』。愛されキャラクターを恐怖に落とし込むアプローチの違いを、ぜひ見比べてみてください。

(Amazon Prime Video)
3)『ウィリーズ・ワンダーランド』(2021)
夜の施設(テーマパークやゲームセンター)に閉じ込められ、不気味なマスコットキャラクターたちに襲撃される恐怖を描いた痛快スラッシャー。本作のアレックスが立たされた「夜のゲーセンでの絶望感」や、B級ホラーとしてのエンタメ感が好きな方に間違いなく刺さる一本です!

(Amazon Prime Video)
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