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【公開前レビュー】『プリティ・クレイジー 悪魔が引っ越してきた』(Lv.0)「悪魔憑き」を恐怖ではなく希望へ変えた異色作
怖さレベル3:緊張と分析

【怖さレベル1:安心】怖さという点ではほどほど。                 だれでも安心して考察できるレベルです。


休職中の青年が階下に引っ越してきた美女に一目ぼれするも、彼女は深夜2時になると「悪魔」へと変貌する特別な秘密を抱えていた――。映画『プリティ・クレイジー 悪魔が引っ越してきた』は、昼と夜で人格が豹変するヒロインと、彼女の監視役に任命された青年が織り成す韓国発の“悪魔憑依”ラブコメディーです。

作品を手がけたのは、映画『EXIT イグジット』を大ヒットに導いた韓国の名手イ・サングン監督。本作でも抜群のコメディーセンスを発揮し、少女時代のイム・ユナと実力派アン・ボヒョンの共演による極上のエンターテインメントに仕上がっています。

さて、本作は恐怖を売りにしたホラー映画ではありません。冒頭のホラーインジケーターは、あくまで表示がないため苦肉の策として「1」を入れていますが、「怖さ」という意味で見ればどう考えても「0」(笑)。しかし、「悪魔」や「悪魔憑き」といった設定は、私たちホラーファンにとって馴染み深い大好物の大博覧会です。

もしも『エクソシスト』の悪魔が、恐ろしくも愛嬌たっぷりな美女だったら? 本記事では、あえてホラー映画ファンの歪んだ眼鏡を通すという「斜めからの視点」から、本作に隠された奇妙な魅力と楽しみ方を徹底的に読み解いていきます。

※なお、本記事には広告プロモーションが含まれます。

【概要】

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過去のある事件で悪魔にとり憑かれて、昼と夜ではまったく異なる顔を見せる女性と、心優しい青年が繰り広げる恋を描いたラブコメディー。

韓国で大ヒットを記録した映画『EXIT』のイ・サングン監督が、同作に続いてイム・ユナとタッグを組んで手がけました。

主演はドラマ「スプリング・フィーバー」のアン・ボヒョンが担当、ヒロインには「少女時代」のメンバーで、女優としてはドラマ「暴君のシェフ」などに出演したイム・ユナ。また他にも、「韓国の父」の呼び名で本国では親しまれているベテラン、ソン・ドンイルが名を連ねています。

原題:악마가 이사왔다(英題:Pretty Crazy)

監督・脚本:イ・サングン

出演:イム・ユナ、アン・ボヒョン、ソン・ドンイル、チュ・ヒョニョンほか

配給:ギャガ

公式サイト

劇場公開日:2026年6月19日(金) シネマート新宿ほか 全国ロードショー

【あらすじ】

ある事情で休職し家に引きこもっている青年ギルグ。彼はある日、自分の住む集合住宅の階下に引っ越してきたパン職人の清楚な女性ソンジに一目ぼれします。

ところが彼はその晩遅くに再びソンジと遭遇、彼女は昼とはまったく別人のように横暴な振る舞いを見せ、ギルグを困惑させます。

そしてまた別の日、彼はソンジの父ジャンスから、彼女が午前2時になると悪魔が目覚め、別の人間に変貌してしまうと聞かされます。

このことを機にギルグは、ジャンスに頼まれ深夜のソンジを見張るという風変わりな仕事をすることになるのですが……。

【『プリティ・クレイジー 悪魔が引っ越してきた』の感想・評価】

1.【戦慄分析】悪魔映画なのに、まったくホラーではない

当サイトによる怖さレベル:Lv.0(怖さは「驚き」(?)のゼロ!)
図:映画『プリティ・クレイジー 悪魔が引っ越してきた』の「怖さ」レーダーチャート

グロテスクなビジュアル/流血:なし

音響による不快感・ノイズ:なし

演出分析:「おいおい、ホラーサイトで何を紹介してんだ?(笑)」

最初に断っておきたいのですが、本作『プリティ・クレイジー 悪魔が引っ越してきた』は、一般的な意味ではホラー映画ではありません

怖い幽霊が現れるわけでもなく、残酷な殺人が起きるわけでもなく、観客を驚かせるジャンプスケアが連発されるわけでもありません。当サイトの基準でいえば、恐怖度は限りなくゼロに近い作品。むしろ「戦慄」という観点でいえば、マイナス評価を付けてもいいかもしれません。

ではなぜ今回、この作品をこのサイトで取り上げたのか?理由は単純。本作が扱っている題材そのものは、ホラー映画ではおなじみだからです。

「悪魔」「悪魔憑き」「悪魔祓い」。

これらは1973年の映画『エクソシスト』をはじめ、多くのホラー映画が繰り返し描いてきた定番要素です。しかし本作は、それらを恐怖のためではなく、人間ドラマやラブコメディーのために使っています。

言い換えれば、本作は「悪魔」という存在を用いながら、ホラーとは正反対の方向へ進んでいく作品。得体の知れないものが現れ、人々の日常を変えていく。ホラーなら恐怖や破滅へ向かうはずの展開が、本作ではいつの間にか居心地の良さや生きる意味へと変わっていきます。

普通に観れば楽しいエンターテインメント作品です。しかしホラーファンの視点から眺めると、「悪魔」という題材の意外な使い方が見えてきます。今回はそんな少し変わった角度から、本作を見てみたいと思います。

2.【作品の批評】韓国エンタメの巧さが光る、完成度の高いラブコメ

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まず純粋なエンターテインメント作品として、本作の完成度は非常に高く本作には観客を楽しませるための工夫が隅々まで行き届いている印象です。

中心となるイム・ユナ、アン・ボヒョン、ソン・ドンイルらの演技はかなり大仰で、冷静に見ればオーバーアクション気味の場面も少なくありません。しかし、それを不自然に感じさせないのは演出と役者陣の力量でしょう。リアリティーよりも楽しさを優先しながら、作品全体のテンポを崩していません。

映像面も印象的です。パステルカラーを基調とした明るく柔らかな色彩が全体を包み込みながら、ときに不穏さを感じさせる暗い色調へ変化します。さらに緑を効果的に使うことで、新鮮さや希望を感じさせる空気感も作り出しています。作品の感情表現を支える色彩設計は見事。

そして興味深いのは、「悪魔」を扱いながらもホラー的な演出に頼っていないことにあります。

音楽も恐怖を煽るものではなく、物語の軽快さを重視。露骨なラブシーンなどにも頼らず、登場人物たちの関係性を丁寧に積み上げていく姿勢には好感が持てます。その一方で、本作は単なるラブコメディーでは終わりません。

悪魔憑き映画の定番である人格変化や除霊の概念を用いながら、それらをユーモアや人間ドラマへ転換しています。恐怖のための装置としてではなく、物語を動かす仕掛けとして再構築しているのです。

特に後半は「憑りついているものの正体」という謎にも踏み込みます。ホラー的な恐怖こそありませんが、その存在の意味を探る展開にはミステリー的な面白さもありました。

ラブコメとして気軽に楽しめる一方で、細かな設定作りにも手を抜いていない。そんな誠実さも感じられます。


3.【深掘り考察】「悪魔がいると怖い」のではない――ホラーとの違いから見える本作の魅力

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本作を見ていると、不思議な感覚になります。

「悪魔がいる」「悪魔憑きがある」「悪魔祓いまで登場する」それなのに、まったくホラーには見えない。なぜか?

ホラー映画で恐ろしいのは、悪魔そのものではありません。悪魔によってもたらされる破滅や死、孤独や喪失こそが恐怖の正体に気づいていきます。

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例えば『エクソシスト』であれば、悪魔は少女の身体と精神を蝕みます。多くの悪魔憑き映画でも同様に、憑依とは人間性を奪われることを意味しています。

しかし本作でももちろん騒動は起こりますが、その存在は人々を不幸へ導くだけではありません。ときにはだれかの背中を押し、ときには人生を前へ進めるきっかけにすらなっています。

つまり本作は、「悪魔がいるから怖い」というホラー映画の前提をひっくり返しているのです。

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こうした発想は、ホラー映画の歴史にも前例があります。『バタリアン』シリーズはゾンビ映画の定番を大胆に崩し、『ショーン・オブ・ザ・デッド』はゾンビ・パニックをコメディーとして再構築しました。

もちろん本作はそこまでジャンルを変革する作品ではありません。しかし「悪魔憑き」というホラーの定番題材を別の角度から見つめ直している点には、どこか共通する面白さがあります。

また本作は、「悪魔とはなにか」という定義そのものも揺さぶります。

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ホラー映画において悪魔や悪霊は基本的に排除すべき存在です。除霊し、封印し、追い払い、人間の世界から消し去らなければなりません。

しかし本作はそうではありません。恐れるのではなく理解しようとし、拒絶するのではなく受け入れようとする。そこにはホラー映画とは正反対の価値観があります。

だからこそ本作は、悪魔を描いているにもかかわらずホラーにならないのでしょう。

もちろん本作は難解なジャンル論を語る作品ではありません。あくまで楽しいラブコメディーです。しかしホラーファンの目線から見れば、「悪魔とはなにか」「恐怖とは」というジャンルの根本にある問いを、意外な形で浮かび上がらせる作品でもあります。

血も悲鳴も飛び交わない「悪魔」の物語。たまにはこんな作品を通じて、ホラー映画で当たり前のように語られてきた「悪魔」という存在を見つめ直してみるのも悪くないのではないでしょうか。


こちらも是非!

なにか「悪魔」「不幸」「異物」的な存在が登場しながらも、最後は「共鳴」を経て理解し合う、戦慄とは正反対な感情を生み出す物語は『トゥギャザーに通ずるものがある。

こちらは純粋な(?)エクソシストの物語『鬼胎(クィテ) 黒い修道女』。「悪魔」と決して迎合しないことを前提に戦う姿は、本作とは正反対であり、両作を並べて見ると不思議にも「悪魔とはなにか」「ホラーとは」といった根本的な問いを楽しめる。


【次回の公開前レビュー』】

次回は作品『アウトウォーターズ 裂けた砂漠』をレビューします。

カリフォルニアのモハーベ砂漠で発見された3枚のメモリーカード。そこには、MV撮影に訪れた4人の男女が、現実の裂け目へと引きずり込まれていく戦慄の記録が残されていた――。

本作は、米公開時にあまりの恐怖から途中退場者や嘔吐者が続出したことで話題を呼んだ、新世代のファウンド・フッテージ・ホラー。画面の大部分を暗闇が占め、懐中電灯の小さな光の輪だけで凄惨な怪現象を捉え続ける、極めて前衛的な映像表現が最大の特徴となっています。

レビューではこの作品が持つ唯一無二の表現手法と恐怖の正体に迫り、人間の精神をじわじわと侵食していく、まったく新しい悪夢の体験を徹底解説します。

当サイトならではの深堀考察に是非ご期待ください!


English Summary

Title: Pretty Crazy (Horror Level: 0) – A Unique Romantic Comedy That Transforms “Demonic Possession” from Terror into Hope
(Scheduled for Japanese theatrical release on June 19, 2026)

Summary:, Pretty Crazy (directed by Lee Sang-geun) is a unique South Korean romantic comedy that masterfully hijacks a classic horror trope: demonic possession. While the film features zero jump scares or gore—ranking a literal “Level 0” on our horror scale—it offers a fascinatingly inverted perspective for horror enthusiasts.

Instead of leading to destruction and despair as seen in traditional exorcism films like The Exorcist, the supernatural entity in this story inadvertently brings a sense of belonging and a newfound purpose to the characters’ lives. Rather than rejecting or fearsomely casting out the demon, the narrative moves toward understanding and coexistence.

Boasting exceptional pastel-toned cinematography and brilliant performances by Im Yoon-ah and Ahn Bo-hyun, Pretty Crazy delivers a top-tier entertainment experience. It serves as a delightful subversion of the genre, proving that sometimes, looking at horror elements through a non-horror lens can reveal the most refreshing stories.


『プリティ・クレイジー 悪魔が引っ越してきた』の不思議かつ前向きな余韻を楽しみたいなら……

1)『ショーン・オブ・ザ・デッド』(2004年)

記事内でも触れた、ホラーの定番をコメディへと鮮やかに反転させた大傑作。絶望的なゾンビ・パニックを絶妙なユーモアと友情のドラマに変えた本作は、『プリティ・クレイジー』の持つ「ジャンルの裏返し」の魅力を知る上で必見の1本です。

『ショーン・オブ・ザ・デッド』
(Amazon Prime Video)

2)『スイッチ 人生最高の贈り物』(2023年)

『プリティ・クレイジー』で韓国エンタメのクオリティの高さ、コミカルさと丁寧な人間ドラマの融合に感動した方へ。傲慢なトップスターが突如見知らぬ人生へ放り込まれる、笑って泣ける極上のファンタジー・コメディです。

『スイッチ 人生最高の贈り物』
(Amazon Prime Video)

3)『バッファロー ’66』(1998年)

「得体の知れない存在と過ごすうちに、いつの間にか居心地の良さと生きる意味を見出していく」――そんな本作のロマンスの核心に共鳴した方には、この不朽のカルト名作を。孤独で不器用な男女の距離感が縮まっていくプロセスが、どこか愛おしく重なります。


配信で楽しむなら、こちらが最短ルート。

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