【怖さレベル4:注意】「怖さ」がかなり具体的なレベル。
ホラーが苦手な人は「要注意」!
ネット発の最恐都市伝説を、元となるYouTube動画を手掛けた奇才ケイン・パーソンズ監督が自ら実写化した映画『バックルームズ』。
不気味な黄色の壁と蛍光灯の不快なうなり。迷い込んだら最後、二度と出られない無限の迷宮を描いた物語です。
キャストには『それでも夜は明ける』のキウェテル・イジョフォーや、レナーテ・レインスヴェら実力派が集結、観客を未知の恐怖へ引きずり込みます。
本作の最大の特徴は、誰もいない不条理な空間がもたらす圧倒的な孤独感と、背後から迫る見えない怪異への恐怖。POV(主観視点)方式を駆使した臨場感溢れる映像により、まるで自分自身がその異常空間に迷い込んでしまったかのような、強烈な「没入感(イマーシブ)」を体験できる新感覚のホラー作品に仕上がっています。
今回は本作の魅力を独自視点のレビューにて、不可解な「戦慄体験」の真相を考察します。
※なお、本記事には広告プロモーションが含まれます。
【概要】

ネットミームをモチーフに、突然に「現実世界」の裏側へ迷い込んでしまった男の不安感広がるさまを描いたスリラー。
本作を手掛けたのは、16歳で発表したYouTube短編動画「The Backrooms (Found Footage)」で注目を集めた映像クリエイターのケイン・パーソンズ監督。
同短編をベースとしA24とのタッグで映画化、19歳で撮影を行い、全米・世界興収ランキングでそれぞれ公開初週1位の映画を生んだ史上最年少の監督となりました。
メインキャストは『それでも夜は明ける』『サンキュー、チャック』のキウェテル・イジョフォーと『わたしは最悪。』『センチメンタル・バリュー』のレナーテ・レインスヴェ。ほかにも『スキャンダル』のマーク・デュプラス、ドラマ「ナイト・オブ・ザ・セブン・キングダムズ」のフィン・ベネットらが共演に名を連ねています。
また本作は110分の本編終了後に16分のスペシャル映像を追加した「Everything Must Go Edition」が制作されており、日本では同バージョンにて劇場公開となっています。
原題:Backrooms
監督:ケイン・パーソンズ
出演:キウェテル・イジョフォー、レナーテ・レインスヴェ、マーク・デュプラス、フィン・ベネット、ルキータ・マクスウェルほか
配給:ハピネットファントム・スタジオ
劇場公開日:
2026年9月4日(金)
【あらすじ】
家具店を経営する店主クラークは、ある日店の下層で偶然、今まで気が付かなかった“あるはずのない隙間”を発見します。
一見するとただの壁でしたが、そこは裏側へ抵抗なく入り込め、その先は全面が黄色い壁紙の異様な空間がずっと続いていました。
さらにフロアには奇妙なバランスで積み上げられた無数の家具、そして果てしなく入り組んで続いていく黄色い部屋。どこからともなく断片的なアナウンスも聞こえてきますが、呼びかけても応答はありません。
クラークはその異様な経験を、自身のセラピストであるメアリーに伝えますが、信じてもらえません。そして彼は、その存在を証明するべくビデオカメラを手に再び足を踏み入れるのですが……。
【『バックルームズ』の感想・評価】
1.【戦慄分析】グロなしでも怖い!「黄色い部屋」より恐ろしいもの
当サイトによる怖さレベル:Lv.4.0(グロはかなり控えめながら、ハンパない雰囲気と不安感!)

グロテスクなビジュアル/流血:少
音響による不快感・ノイズ:あり(ほんのわずかに聞こえる環境音が不安感をあおる)
演出分析:見せないからこそ、想像の中で恐怖が完成する

本作は、強烈な不安感と雰囲気によって、観る者に恐怖を植え付ける作品。
グロテスクな描写はほとんどないにもかかわらず、絶妙なタイミングで打ち込まれる突発的なジャンプスケア、不穏感を醸し出す音響、そして画角の工夫によって、直接的に見せることなく恐ろしい光景を観客の頭の中に想像させ、そこで恐怖を完成させていきます。
その第一歩となるのが、メインキャラクターの一人であるクラークが、謎の部屋「バックルーム」へ足を踏み入れる場面です。

得体の知れない場所であるにもかかわらず、なぜ彼はそこへ入ってしまうのか。そして、この場所にいることで彼はどうなってしまうのか。
クラークの表情から伝わってくる不安を観客も共有することで、単なる「奇妙な部屋」が、すでに不穏な空間として立ち上がってきます。
監督の斬新なアイデアもさることながら、部屋の端々に登場する奇抜なモチーフもユニークです。製作にはオズグッド・パーキンスも名を連ねており、そう思って観るからか、空間の端々にどこか彼の作品を思わせる、説明しにくい奇妙さも感じられました。
映像として直接的なビジュアルを排除しながらも、猛烈な不安感や恐怖感を生み出しているところが本作の大きな特徴です。
グロテスクなものを見せるのではなく、見せないことで観客に想像させる。その恐怖の作り方は、まさに現代ホラーの一つの形と言えるでしょう。
2.【作品の批評】「黄色い部屋」を映画にしたのではなく、人間を入れた

「黄色い部屋」という強烈なイメージを、どうやって長編映画の物語にするのか。本作の面白さは、その答えとして人間を置いたことにあるのではないでしょうか。
インターネット・ミームをベースにした物語であることを考えると、ここまで一つの映画としてまとめ上げたことにも驚かされますが、特に印象的なのが、家具店を経営するクラークと、彼のセラピストであるメアリーという二人のキャラクターです。
何もかもがはっきりしない物語でありながら、妙に観る者の気持ちと重なってくる。その理由は、単に「黄色い部屋」という奇妙な空間を見せ続けるのではなく、そこにそれぞれの人生や問題を抱えた人間を置いているからでしょう。

世界の仕組みが分からなくても、人間のことは分かる。だからこそ、観客は物語から置いていかれません。
ケイン・パーソンズ監督はインタビューで、作品作りにあたって「世界をよく知らない人にも成立する物語のエンジンが必要だった」という趣旨の発言をしており、脚本担当のウィル・スーディクとともに、心理学を中心としたプロットを作ったと語っています。
そう考えると、「バックルーム」という“場所”だけなら、奇妙な映像で終わってしまうものを、クラークとメアリーという“人間”を置くことで長編映画として成立させた、とも考えられます。
『Backrooms』は、奇妙な世界そのものを見せる映画というより、その世界に放り込まれた人間を見る映画なのではないでしょうか。
3.【深掘り考察】「何なんだ、この場所?」から始まる恐怖
インターネット発の都市伝説「バックルームズ」をモチーフにした本作。その成り立ちを知れば知るほど、観る前にある程度の知識が必要なのではないかと思ってしまうかもしれません。
しかし今回は、あえて予備知識なしで本作を観た一人の観客として、この物語を考えてみたいと思います。
壁の奥に潜む「バックルームズ」。黄色で統一され、どこへ通じる場所なのかも分からない空間には、聞こえるか聞こえないかというほどの微妙な不穏な環境音が漂っています。
そこに不規則に配置された家具や、壁や廊下にめり込んだような物体。何のために存在するのかも分からず、「なぜこんな状態になっているのか?」という疑問ばかりが浮かんできます。
パーソンズ監督が自身のYouTubeアカウントで公開している映像を観ても、この空間の奇妙さは十分に伝わります。しかし、そこに物語がなければ、これはあくまで「奇妙な場所」で終わってしまうのではないでしょうか。

映画では、その空間にクラークという人間が入ってきます。
家具店を経営しながら私生活ではさまざまな問題を抱え、自分の身に起きる不条理を受け入れられず、セラピーを受けている人物です。そして、そのセラピストであるメアリー自身も、過去の出来事を抱えながら生きています。
ここで興味深いのは、「黄色い部屋」そのものが主役という印象ではないことです。
むしろ、その不可解な空間に入ってくる人間たちそれぞれが、何を抱えているのか。その背景によって、同じ空間であっても起こることの意味が変わってくるように感じられます。
クラークは、自分の抱えている不条理を不条理のまま受け入れることができない。一方でメアリーは、彼に「理解し、受け入れること」の必要性を説いていきます。
この二人は最終的に別々の道を歩んでいくことになりますが、そこには、不条理をどう受け止めるのかという違いが表れているようにも見えます。
そう考えると、「バックルーム」は単なる異世界ではなく人間が抱えている迷いや不安を映像として具現化した場所とも捉えられるのではないでしょうか。
何かを乗り越えることへの恐怖。自分がこれからどう生きていくのかという不安。そして、そもそもこの先も生きていけるのかという感覚。
黄色一色の単調な空間だからこそ、そこにいる人間が何を抱えているのかを、観客は想像することになります。
つまり、この二人だからこそ、この「バックルーム」で起きることに意味が生まれたとも解釈できます。

ケイン・パーソンズ監督は、『Backrooms』の魅力について、散りばめられた謎を人間の限られた知覚や記憶を通じてどう解釈するかにある、という趣旨の発言をしています。
ストーリーも映像も、一見するとかなりシンプルです。しかし、だからこそ観る側の想像力が入り込む余地がある。
何も知らずに観てもいい。分からないものを、分からないまま楽しんでもいい。
そんな自由さもまた、本作の魅力なのではないでしょうか。
こちらも是非!
「何が起きているのかが分からない」物語で猛烈な不安感を醸すという演出では、共通点も感じられる『SKINAMARINK/スキナマリンク』。
本作の製作にも名を連ねているオズグッド・パーキンスが手掛けた『KEEPER/キーパー』。極端なゴア表現を廃しながらも、奇妙な光景、構図で猛烈な不安感をあおるというスタイルは、本作同様に「新しいホラー」の潮流を感じる。
【次回の『公開前レビュー』】
次回は作品『5秒で完全犯罪を生成する方法』をレビューします。
日常に潜むテクノロジーの利便性と、その裏に潜む狂気。対話型AIに「完全犯罪の成立方法」を問いかけた兄妹の運命を描くこの作品は「わずか5秒で生成された指示が、最悪の事態を招く」というさまを描いた新時代のクライムサスペンス映画です。
監督を務めるのは、『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』で注目を集めた奇才・近藤亮太。キャストには、妹を守るために奔走する主人公を演じる重岡大毅(WEST.)と、事件の引き金となる妹役の原菜乃華という実力派の二人が集結し、緊迫の心理戦を繰り広げます。
本作の特徴は、誰もが使う生成AIという身近な題材が生み出すリアリティ溢れるプロットの妙です。画面に打ち込まれる冷徹なAIの指示と、それに翻弄され追い詰められていく人間の焦燥感が、観客自身が共犯者になったかのような強烈なスリルと没入感をもたらす、極上のエンターテインメントの見どころを、独自の視点から徹底レビューします。
当サイトならではの深堀考察に是非ご期待ください!
English Summary
Title: Backrooms(Horror Level: 4.0)
Summary: Directed by Kane Parsons and produced by A24, Backrooms expands the internet urban legend into a compelling psychological thriller. Starring Chiwetel Ejiofor and Renate Reinsve, the film shifts the focus from a mere uncanny environment to the human beings trapped inside it. By foregoing explicit gore in favor of tense atmospheric audio and claustrophobic framing, the movie invites audiences to mentally complete the horror, exploring how personal trauma and inner anxiety project onto an endless, disorienting yellow labyrinth.
『マーターズ』にも通ずる、残酷描写の衝撃と複雑な構成を体験したいなら……
1)『SKINAMARINK/スキナマリンク』(2022年)
『バックルームズ』の静かな狂気にハマったなら必見!解釈を観客に委ねる実験的ホラー!

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2)『KEEPER/キーパー』(2025年)
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3)『ヘレディタリー/継承』(2018年)
A24が贈る新たなトラウマホラー!同スタジオの傑作ホラー映画も合わせてチェック!

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