【怖さレベル4:注意】「怖さ」がかなり具体的なレベル。ホラーが苦手な人は「要注意」!
※本記事は2025年3月31日に、以下URLにて公開しました。
「horrortopics.com/post/r-oundead」
3月28日に発生したミャンマー大地震に対し、心よりお見舞い申し上げます。地震の影響は隣国タイにも及んでいるとのこと、非常に厳しい状況が続きますが一日も早い復興をお祈りいたします。
今回紹介する映画はそのタイ発のゾンビ・ホラー映画『哭戦 オペレーション・アンデッド』。
第二次世界大戦下、タイのとある村落にやってきた魔の手が、平穏な暮らしを営んでいた人々を生きながらに地獄に突き落としてしまう顛末を描いたこの物語。生々しく強烈な残酷描写が強い印象を醸しながらも「悲哀」を伴う異色の物語であります。
※なお、本記事には広告プロモーションが含まれます。
【「生ける屍」の迫力ある表現に注目!】
とにかく「生ける屍」の表現力に圧倒されます。ジョージ・A・ロメロが『ドーン・オブ・ザ・デッド』でゾンビを描いた段階で、ある意味「生ける屍」のビジュアル的イメージは完成されたようでもありますが、本作ではその基本を踏襲しながらもアングルへのこだわりなどでかなり迫力のあるシーンを演出。上の場面写真や予告動画からも、そのスケール感はうかがえるところでしょう。
ホラージャンルでは、どちらかというとビジュアル面のショッキング性を重視した作品は、あまり見られない印象もある近年。しかしわりにアジア圏内、特に東南アジア方面では本作のように「初見のインパクト重視」的な作品が、目立って発表されているようにも感じられ、ある意味注目すべきエリアである印象です。
広角で狙う「ゾンビから逃げる人々」の場面は見応え十分!結果的に皆逃げ切れないという顛末は、なかなかにゾッとするもの。グロテスクなシーンのインパクトは抜群。胸がゾワゾワするような衝撃感たっぷりの、ホラー映画としてはなかなかにショッキングな作品であります!
【概要】

第二次世界大戦のさなか、平和に暮らしていたタイのとある村落に持ち込まれた禁断の生物兵器により「生ける屍」と化することを余儀なくされた少年兵たちの哀しき運命を描いたホラー映画。
『バッド・ジーニアアス 危険な天才たち』のチャーノン・サンティナトーンクン、『ドイ・ボーイ 路地裏の僕ら』のアワット・ラタナピンターがメインキャストを務めます。
2024年製作/110分/R15+/タイ
原題:ช.พ.๑ สมรภูมิคืนชีพ(英題:Operation Undead)
配給:アルバトロス・フィルム
劇場公開日:2025年4月18日
【監督・脚本】
コム・コンキアート・コムシリ
【出演】
チャーノン・サンティナトーンクン、アワット・ラタナピンター、スピチャー・サンカチンダー、大関正義ほか
【あらすじ】
第二次世界大戦の戦火が世界に広がる1941年、タイ南部の湾岸の村では有事への備えとして少年兵たちが戦争に向けた訓練を受けていました。
そんな中で伍長を務めるメークは、戦争への緊張感をおぼえる一方で恋人ペンとの間に子どもを授かり、幸せな気分にも浸っていました。
ところがこの村に日本軍が上陸してきたことで事態は一変していきます。タイ政府は日本政府と友好的に交渉しようと試みるも、日本軍は恐ろしい生物兵器持ち込み、村を混乱と恐怖に陥れていきます。
その生物兵器は禁断の実験によって生みだされた、家族や恋人への思いや戦争への憤りなど、人間の心を持ち続ける一方で、致命傷を受けても倒れず生き物を食い殺そうとするという残酷なもの。
そして少年兵たちは戦場に駆り出されることになり、メークの弟モークも戦場へ行くことに。戦場では少年兵たちが次々と襲われ、生ける屍と化して…
※2026年4月9日追記
【戦慄分析】
当サイトによる怖さレベル:LV.4(視覚的、直接的な怖さに注意!しかし「怖さ」だけではないテーマにも要注目)

グロテスクなビジュアル:大(王道の「ゾンビ映画」らしいおぞましさ)
音響による不快感・ノイズ:あり(中)
演出分析:従来のグロ性を保ちながらも、物語に新たな意味をもたらした「ゾンビ映画」
本作のグロテスク性は、往年の「ゾンビ映画」が描き続けた地獄絵図の流れを汲む強烈な凄惨さ、むごたらしさを踏襲したもの。「ゾンビ映画」はある程度ジャンルとして成熟し、近年はバラエティーに広がりを見せている中で、この作品のビジュアルで見られるストレートな残酷さは、意外にも新鮮に見えるのではないでしょうか。
CGなどの特殊技術がかなり発達する中で、モンスター系映画でも敢えて造形に徹するなど、わりにオールドスクールな方向に徹する傾向も感じられる東南アジア系のホラー。本作にもその方向性が見られ、特殊技術の使用がうかがえる一方で、その残酷描写にはかつて「ゾンビ映画」でよく見られた残酷描写の雰囲気が感じられます。
一方で「人間としての意志を持ったまま」のゾンビ、その特性を生かした光景も見られます。生きながらに死人と同様の状態になる哀しさ、一方で心の中に持ち続ける美しき記憶。そのイメージを「美しい」と思える情景で描いており、ショッキングなシーンと強いコントラストを生んでおり、「怖さ」だけでは終わらない複雑な感情を見る者に植え付け、大きく揺さぶってきます。
また表面的には明らかにホラー作品であるはずが、エンディングに近づくに従い涙すら誘う悲しいストーリーと、非常にユニークさも感じられる展開。その意味では「伝統的なゾンビ・ビジュアル」を用いながらも、ゾンビを用いたメッセージ性のある物語を構築したという点において、現代的なゾンビ・ストーリーの流れに即した物語であるともいえるでしょう。
肉体が腐敗しながら人肉に飢えていく中で、精神だけが人間としての誇りや記憶に縋り付く。その『引き裂かれるような残酷さ』こそが、本作が「単なるゾンビ映画で終わらない」理由でもあります。
『救いのなさ』:5は、「単に全滅する」という物理的な絶望よりも人間としての心を持ったまま、愛する者すら食らわねばならないという、精神的な地獄の深さに対する評価を示しています。
この逃れられない悲劇性が、往年のゾンビ映画のビジュアルと合わさることで、観る者の心に消えない傷を刻みつけてくるのです。
【『哭戦 オペレーション・アンデッド』の感想・評価】
1.「生ける屍」表現

先にも述べましたが、「生ける屍」、いわゆるゾンビが本作にも登場するも、どこか従来の「ゾンビ映画」とは一線を画するカラーが感じられます。その大きなポイントとしては「意志を持ったまま『生きる屍』となってしまうこと」という点にあるといえるでしょう。
以前公開した公開情報でも記しましたが、本作の邦題にある「哭」という文字は、本作のイメージを示す重要な要素。2021年に公開された台湾の『哭悲/THE SADNESS』もまた人が病気にむしばまれ、意志を持ったままにゾンビのような存在と化してしまう物語でありました。
一方、『哭悲/THE SADNESS』が意思を持ちながらも、ある意味精神的にもむしばまれてしまうのに対し、本作の「生きる屍」は自身の「死なない」という異常、そして抑えるのが困難なほどの猛烈な飢えを、生きているときの意志を持ち続けたままに感じるという残酷さ。

その意味では従来のゾンビ映画とは異なる視点を感じるものであり、ある意味2013年の映画『ウォーム・ボディーズ』の視点に近いものがある、ともいえます。
また本作では予想だにしない、うっとりするような美しさを醸すシーンがわずかに現れます。グロテスクな残酷シーンとのコントラストは、まさに本作の物語をうまく表現するための大きなカギ。
怖さもありながら、対極の美しさも感じさせる。その意味で「怖さ」の対極的な「哀しさ」を、映像を中心とした表現で深く感じられる作品であるともいえるでしょう。
2.歴史の裏にあるタイの思いが込められた「悲劇」

一方で興味深いのは、本作が第二次世界大戦という歴史上の大きな事件を背景としているところにあります。
本作の発案は、第二次世界大戦における日本軍に実在したといわれる「731部隊」という有名な組織の存在を着想点としているといわれており、物語の主軸としてもタイと日本という二つの国における対立的な構図が見えてきます。
歴史考証、映画評論という観点では、誇張表現、歴史的誤りという点を指摘する声もあります。しかし物語としてはこの第二次世界大戦という大きな事件の裏で、タイという国が抱いた一つの印象にクローズアップしていると見ることもできます。

日本人俳優である大関正義は徹底的に「悪役的な」日本人軍人を演じ、タイ側の視点で見た日本、日本軍の恐ろしさをうまく表現しているといえます。
彼とメインキャスト二人の対立はこの日本とタイという対立構造の中で、まさに侵略者に侵された、平和な村に住む人々の悲劇をストレートに表しており、戦争によって弱者が受ける不条理さ、哀しみというポイントを浮き彫りにしています。
リアルな残酷表現などの意味も、そんな主題を表すための必要表現であるとも見えてくる、ある意味「ホラー」という一言で片づけるのも難しい作品でもあり、特にラストシーンには強いメッセージ性を感じさせられるでしょう。
※2026年4月9日追記
3.「蘇り」という不完全な救済、その傲慢さへの代償
本作の「人為的に作り出された奴隷・操り人形」という性質は、実は「ゾンビ」という存在のルーツとなった、ハイチの「ゾンビ伝説」に近いところがあります。
その意味で本作は、ロメロによって「意志なき食屍鬼」として広まったゾンビが、現代のタイ(東南アジア)という地で、再び「人間のエゴによって歪められた存在」へと先祖返りし、かつ進化した、という新たな思想を描いた物語とみることもできます。
一方で本作では「愛する者を繋ぎ止めるため、人為的に死を否定する」という行為が見られます。
これは1994年の『フランケンシュタイン』で、フランケンシュタイン博士が不遇の死を遂げた恋人をよみがえらせようとした行為を想起させます。同時にこの点におけるゾンビという存在は、サバイバルではなく「倫理の崩壊」の物語となっているといえます。
主人公の選択は、究極の愛であると同時に、相手の尊厳を無視した究極の独善でもあります。この結果「愛する者」が選ぶ結末は「死よりも恐ろしい生がある」という、ホラー映画における最大級の絶望を象徴しています。
ロメロ以降のゾンビ作品でも、ある意味本作のような「人為的発生ゾンビ」はありましたが、本作では特にその「ゾンビにする」「人を生き返らせる」という行為に対する人間的、人道的な観点からの批判を描いた作品であるともいえるでしょう。
こちらも是非!
ホラー?いやいや、どこか笑えて泣ける、感動の「幽霊」物語。マルチバース手法を大胆に取り入れた、「タイ発」の超個性派作品。
English Summary: “Operation Undead”
(ช.พ.๑ สมรภูมิคืนชีพ)
Title: Beyond the Flesh: The Tragic Resonance of Thailand’s “Operation Undead”
[Overview] Set against the turbulent backdrop of World War II in 1941, Operation Undead is a haunting Thai horror film that transcends the typical zombie genre. Directed by Kongkiat Komesiri, it follows young soldiers in a coastal village who fall victim to a forbidden biological weapon brought by invading forces. Starring Chanon Santinatornkul and Awat Ratanapintha, the film explores the harrowing fate of those forced to become the “living dead” while retaining their human consciousness.
[Key Analysis: The Horror of Sentient Undead] Unlike traditional zombies that lose their humanity, the creatures in Operation Undead suffer the ultimate cruelty: they remain aware of their past lives, their families, and their insatiable hunger. This “sentient undead” concept—evoking the dread of Taiwan’s The Sadness (2021) but with the emotional weight of Warm Bodies (2013)—creates a profound sense of “Kanashimi” (sorrow). The film’s visual prowess, utilizing wide-angle shots of desperate escapes and visceral practical effects, highlights Southeast Asia’s current dominance in high-impact horror.
[Social Metaphor: War and Injustice] The film draws inspiration from the chilling history of Unit 731, positioning the supernatural threat within a real-world conflict between local villagers and imperial invaders. By focusing on the tragedy of the weak caught in the gears of war, Komesiri delivers a powerful message about the absurdity and cruelty of invasion. The stark contrast between the grotesque violence and moments of haunting beauty serves as a poignant metaphor for “the difficulty of living” (Ikizurasa) amidst historical trauma.
この惨劇の奥にある「悲劇」を、その眼で確かめるなら。

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