【怖さレベル4:注意】「怖さ」がかなり具体的なレベル。ホラーが苦手な人は「要注意」!
新時代のホラー映画を担う才能を発掘する人気プロジェクト「現代怪奇百物語」の最新作『耳袋夜噺』。
インディーズホラー界を牽引する10名の監督が、それぞれの視点と自由な発想で奇怪な世界を描き出す、全10編の最恐オムニバスホラーです。
日本ホラー映画大賞(豆魚雷賞)の受賞歴を持つ早田優太(『樋口家の場合』は鶴川ショートムービーコンテスト2025グランプリ受賞)や藤岡晋介、世界屈指のシッチェス・カタロニア国際映画祭に選出された夏目大一朗など、実力派の監督陣が集結。キャストには運上弘菜や谷村優樹、髙橋彩香、藤園麗らが名を連ね、日常の隙間に潜むリアルな恐怖を体現しています。
王道の心霊現象から、浴室を舞台にした密室ホラー、動画配信がもたらす都市伝説まで、観る者を飽きさせない多彩なアプローチが見どころの本作。10の怪談がもたらす、バラエティに富んだ “十人十色の恐怖” の全貌を紹介します。なお、今回は特別に全体の戦慄分析+各作品のミニ評価スタイルでお届けします
※なお、本記事には広告プロモーションが含まれます。
【概要】

10人の映画監督がそれぞれ手がけた10編の怪談で構成されるホラーオムニバス。
「心霊盂蘭盆」「心霊曼邪羅」などの心霊シリーズで知られるホラーレーベル「ラミアプロジェクト」が、次世代のホラーの才能を発掘する目的でスタートした企画で、KADOKAWA主催の日本ホラー映画大賞で豆魚雷賞を受賞した藤岡晋介や早田優太など、各地のホラー映画祭で実績を重ねてきた監督陣が集結。日常の隙間に潜む怪異を、10人の作り手が十人十色の感覚で描き出します。
配給:Cinemago
劇場公開:2026年7月18日(土)よりK’s cinema、シネマート新宿、池袋シネマ・ロサ、ほか全国公開
※封切館・K’s cinemaでは合計10作品を5作品ごとに分けて上映を行う予定とのこと
【収録作品】
【『耳袋夜噺』の感想・評価】
1.【戦慄分析】視界不良、不穏な音楽。モキュメンタリーの限界に挑む引き算の恐怖
当サイトによる怖さレベル:Lv.4.0(但し、タイトルによるレベルの差はあり)

グロテスクなビジュアル/流血:中
音響による不快感・ノイズ:あり(作品ごとの多彩な演出が堪能できる)
演出分析:強烈なグロイメージを増大させる「見えにくさ」と音響の魔力
総合的な評価は難しいものの、本作に収録されているそれぞれのストーリーは総じて「戦慄」という面では、総じて高いレベルを示しています。
「ジャンプスケア」「グロテスクさ」「不安感」「雰囲気」「救いのなさ」といった戦慄レベルは作品それぞれの特徴により異なりますが、いずれも意欲的な表現が施されており、総じて見るとやはり後味として残る要素は高くといえるでしょう。
かなり手の混んだ特殊効果を織り交ぜたものもあれば、特別難しい効果はなくとも構成の妙が見えてくるもの、俳優陣の表現力の秀逸さなど、映像的表現から見られる戦慄性もさまざまで、オムニバスという形式の魅力が十分満喫できる作品です。
2.【作品紹介】
「ナイトルーティーン」

監督:ワタナベカズキ
出演:運上弘菜、一ノ瀬のこ、きよながちさと
【ストーリー】
癒しの動画が導くのは、新しい自分か、“誰か”。そのナイトルーティーン、最後まで観た者はもういない。

いわゆるVlogと呼ばれるトレンドの一つをモチーフに描いたストーリーですが、インフルエンサーの「新しい自分へ」という言葉が歪んだ方向へ見るものをいざなっていく、というアイデアが非常にユニーク。現実と異空間の切り替えを示す照明の色使いも注目ポイント。
「樋口家の場合」

監督:早田優太
出演:谷村優樹、平野健介、シマタイキ、波佐本麻里
【ストーリー】
空き家を片付けるため、荒木・村瀬・樋口の3人は久方ぶりに再会する。和気藹々と作業が始まるが、一人で2階を片付けていた村瀬は早々に帰ってしまう。村瀬の代わりに2階へ上がった荒木は、とある“異様なもの”を発見する。

全編が暗いイメージの中で起こる「ゾッとする瞬間」を形作るメカニズムが秀逸。実は大したことは起こっていない中で「何かがあった」「何かがいる」という見えない戦慄が主人公を通して観衆側にダイレクトに伝わってくるようです。その恐怖の要因を敢えて曖昧にしているのもうまい演出といえます。
「風呂の中の女」

監督:中村好伸
出演:髙橋彩香、新井里奈、大沢真一郎
【ストーリー】
血と幽霊と、密室。一人暮らし、誰もいないはずの浴室から声がして……。浴室を舞台にしたワンシチュエーション・ホラー。

日常に突然現れた一つの異変、そしてその怪異から見えてくる真実と絶望という展開。どちらかというと結末を明確にし「救いのなさ」を後味として残すタイプのホラーといえるでしょう。血が大量に流れるグロテスク性もあり、短くシンプルな作品ながら広い戦慄性も感じられる物語といえるでしょう。
「手毬の少女」

監督:美濃良偲
出演:ナナエ、工藤奈々、高橋改、白石望莱
【ストーリー】
心霊番組のロケで京都の廃校を訪れた高校生タレントの桜庭夕とテレビクルーは、手毬唄を歌う謎の少女に翻弄されていく。

音響効果、特殊メイクやさまざまな特殊効果を駆使し描かれたストーリー。いわゆる「心霊スポットを訪れたグループ」という定番的なテーマですが、得体の知れないものに遭遇する恐怖感を醸す演出は抜群。恐怖にさいなまれるクルーたちの、決着の付け方にもセンスを感じられるところです。
「貞淑な妻」

監督:夏目大一朗
出演:ハニトラ梅木、三石悠月、田島春那、夏目大一朗
【ストーリー】
売れない作家のタケシは、都市伝説系YouTuberミドリと共にとある廃墟に向かう。そこには、白いワンピースの女がいて……。

この作品も「いわくつきの場へ突撃した者たちに降りかかる恐怖」を描いた物語。「都市伝説」「匿名投稿」などといったキーワードからもジャパニーズ・ホラーとしてはスタンダードなテーマを思わせますが、山場のシーンはインパクト十分。ラストのどんでん返しでは、ふとスタンリー・キューブリックの『シャイニング』を彷彿する場面も。
「イマジナリー」

監督:高梨太輔
出演:山根優佳、善木南帆、貴野萌、陽乃ほのか、夏川紗理奈、龍澤ゆき奈、ちゃびまち、渡邊崇、太三
【ストーリー】
ある日、うーかの双子の姉が何者かに殺害された。彼女は姉の形見であるパワーストーンを大切に身に付けていたが、アイドル活動を続ける中で突然失くなってしまう。やがて、うーかの周りにいる一部のファンたちが亡くなる事件が次々と起こり始める。犯人は一体誰なのか?そして目的とは?

「推し活」「アイドル」、そしてその裏に潜む闇の部分。日本の現代社会でも近年注目されている視点を取り上げた物語ですが、なにか霊的な存在を感じさせながらも、その存在を明確にしないことで、「生きている人間の醜悪な部分」がクローズアップされる効果を生み出しており、その嫌悪感のような戦慄こそが特徴といえるポイントでもあります。
「私たちのセリフ」

監督:佐々木友紀
出演:清瀬やえこ、栗原みさ、古林南、吉城秀美
【ストーリー】
稽古前の俳優たちは、読み進めていた脚本の“異変”に気づく。「私たちが口にした言葉が、全て脚本に『セリフ』として書かれている」……。何もかもを支配する、恐怖の脚本の結末は?

本オムニバスの中でもかなり特殊な作品。どこかコメディーでも起きそうな冒頭から徐々に不穏感を醸していく演出にはセンスが感じられるところです。また展開の中でどこか物語と現実の世界の境界が曖昧になっていく箇所は、ウェス・クレイヴンによる人気シリーズの一作『スクリーム4』のクライマックスに見られる混乱と重なっていくようにも感じられます。
「生魑魅(いきすだま)」

監督:鬼村悠希
出演:クニミノブヒコ、入江ケースケ、江川慎一、前村雄大、KON
【ストーリー】
轢き逃げ事件を起こした2人組は、海外逃亡を企てていた。一方で被害者の男は、事故の後遺症で車椅子生活を送っていた。同時刻、事故発生当時のニュース報道が流れ始める……。

短い尺の中における物語の経緯の表し方、そのまとめ方が非常に巧妙な作品です。見る側としては何も知らない前提で幕を開けるスタートは「この人たちは一体何者?」という混乱をきたしますが、その真相は徐々に明確となっていき、ラストの衝撃をとてつもないものにしていきます。この展開を作る上では、役者陣の表情による表現がかなり光っている作品であるといえます。
「宍の涙」

監督:藤岡晋介
出演:蒔埜ひな、篠崎大悟、夏目大一朗、永澤優月
【ストーリー】
孤独死した父を降霊した少女・梨花は、異形の獣霊と対峙する。過去の嘘が呼び寄せた飢えた怨念の前で、彼女は贖罪の涙を流し、自らを差し出そうとするが——。

この作品の見どころは、やはりなんといっても「異形の存在」。その造形もさることながら、劇中の見せ方もひねりを加え、異空間的な存在も醸してきます。さらにグロ描写にも強いこだわりが垣間見られ、ストレートなホラー作品を楽しめます。一方でラストに残る「せつなさ」のような雰囲気にも、物語自体に込められた強い主張が感じられます。
「供花の子(くげのこ)」

監督:辻川優里
出演:藤園麗、宮里莉羅、みやたに、中川パラダイス、志水九九美
【ストーリー】
転校生の美桜は、満開の桜が浮かぶ海の夢を見る。村の言葉に導かれ、少女は“供花”として選ばれていく。桜の海の夢が告げる、少女の幻想怪奇譚。

可憐な少女に美しい田園風景。その華やかに見える色彩感覚からは、とてもホラー的展開が想像できないところ。しかし一方で「だからこその恐怖」、おぞましき色彩が映えてくる作品です。ムラ社会を想起させるテーマも感じられる物語ですが、本サイトで紹介した『プリティ・クレイジー 悪魔が引っ越してきた』と対比してみると、意外にユニークな論点が感じられるかも知れません。
【次回の『公開前レビュー』】
次回は作品『ポパイ・ザ・スレイヤーマン』をレビューします。
パブリックドメインとなった人気キャラの「悪夢化」に挑む、衝撃の超パワー系スラッシャーホラー。小さな港町に伝わる“伝説の船乗り”の都市伝説。その真相を追う大学生のデクスターと友人たちは、夜の廃工場へ忍び込みますが、そこにはお馴染みのホウレンソウ缶と異様に巨大な前腕を武器にした、残虐無比な殺戮者が待ち受けていました……。
監督を務めるのは、数々のホラーを手がけてきた職人ロバート・マイケル・ライアン。主演はショーン・マイケル・コンウェイが演じます。本国公開時から「原作ファン騒然の問題作」としてSNSを揺るがし、日本公開前にもかかわらず早くも米メディアで続編の制作が報じられるなど、世界的な注目度は抜群です。
見どころは、パイプ煙草の香りと共に迫り来る圧倒的な絶望感、そして人体の常識を超えるパワーで若者たちを引き千切り、叩き潰す大惨殺シーン!
当サイトならではの深堀考察に是非ご期待ください!
English Summary
Title: “Mimibukuro Yobanshi” (Horror Level: 4.0) – An Indescribable Nightmare Formed by the Power of Pure Imagination
Summary: “Mimibukuro Yobanshi” is a J-horror omnibus film featuring 10 short stories directed by 10 up-and-coming creators, including Yuta Hayata and Shinsuke Fujioka. From traditional ghost stories to digital urban legends, each 10-minute segment delivers a distinct flavor of dread. While evaluating the film as a single package is challenging due to its diverse nature, the overall quality of terror remains consistently high. This review breaks down all 10 stories with minimal, high-impact commentary, capturing the essence of this horror variety box.
『耳袋夜噺』のバラエティー性あふれる恐怖をより楽しみたいなら……
1)『現代怪奇百物語』シリーズ
本作のルーツであり、同じくラミアプロジェクトが仕掛ける新進気鋭のホラー発掘企画。最新作を観る前に、その原点にあるインディーズホラーの熱量をぜひ体験してください。

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2)『スクリーム4:ネクスト・ジェネレーション』(2011年)
『私たちのセリフ』で描かれる、現実と虚構の境界線が曖昧になるメタ的な恐怖。その映画的カオスをより深く味わいたいなら、ウェス・クレイヴン監督のこの名作が必見です。

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