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【映画レビュー】『便座・オブ・ザ・デッド』 B級的タイトルが惜しいと思える「人情、群像劇」【旧サーバ記事】

※本記事は2024年9月30日に、以下URLにて公開しました。
「horrortopics.com/post/r-stalled」

今回紹介する映画は、トイレという閉鎖空間でゾンビの恐怖におののく一人の男性の姿から、人間の深層心理や人生を描いたホラーコメディ映画『便座・オブ・ザ・デッド』
なんともいえない邦題です(笑)。

ゾンビ映画はジョージ・A・ロメロの『ドーン・オブ・ザ・デッド』発表以降、どうも邦題に「〜・オブ・ザ・デッド」と付けられてしまう傾向があり……まあ分かりやすいという利点もあるのでしょう。「これが入っていればゾンビ映画だな」と一目で分かりますからね。

ポスタービジュアルなどから一見すると明らかにB級感が漂う作風ですが、トイレという限定された一つのロケーションでここまで物語を展開させた点に本作の大きな旨味があります。低予算系に見られがちですが、内容としては実に濃い作品と言えるでしょう。

2014年のポルト国際映画祭(Fantasporto)でノミネート、2013年のスウェーデン・ファンタスティック映画祭でシルバーメリエス賞を受賞するなど、批評家筋でも意外なほど高い評価を獲得している作品です。

※なお、本記事には広告プロモーションが含まれます。

【概要】

ゾンビの襲撃により女子トイレの個室に閉じ込められた男性が、どうにか脱出を試みる中で直面するさまざまな出来事を描いたゾンビコメディ。

手がけたのはイギリスのクリスチャン・ジェームズ監督。脚本を担当したダン・パーマーが主演を務めています。

2013年製作/84分/イギリス

原題:Stalled

日本公開日:2014年(DVDリリース等)

【監督】
クリスチャン・ジェームズ

【出演】
ダン・パーマー、アントニア・バーナス、タマリン・ペイン、マーク・ホールデン、サラ・ギンズ、ビクトリア・ブルーム ほか

【あらすじ】
ある年のクリスマスイブ。オフィスビルのメンテナンス作業に入っていた作業員のWC(ダン・パーマー)は、こともあろうにゾンビの大発生に遭遇してしまいます。ひょんなきっかけで女子トイレの個室に入っていたWCは、洗面台で噂話をしていた女性社員がゾンビに噛まれたことで異変に気づきますが、そのまま個室に閉じ込められてしまいます。作業道具は洗面台のすぐそば。彼はゾンビに捕まらないよう道具を取り戻して逃げ出そうと試みますが……。


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【『便座・オブ・ザ・デッド』の感想・評価】

1.「ゾンビフォーマット」をベースに巧みに作り上げた人間ドラマ

ホラー映画の金字塔として確立された近代ゾンビ映画ですが、1985年の『バタリアン』や2004年の『ショーン・オブ・ザ・デッド』、近年のドラマ『ウォーキング・デッド』などを経て、恐怖要素を別の視点に置き換えた「ゾンビフォーマット」を活用する作品が増えてきました。

これらは純粋なホラーとしては「怖くない」と評されたり、B級作品として見られがちな傾向にありますが、中には「ゾンビ」という存在をテーマの深い象徴として捉えた味わい深い作品も存在します。

本作においてゾンビは「目前に迫った危機」の象徴でありながら、主人公である一人の青年の深層心理や本音を掘り起こすための仕掛けとして機能しています。

主人公は自身の立場に悶々とした日々を送る名もなき青年。女子トイレの個室に閉じ込められた彼は生き残るため必死に抵抗しますが、その姿はどこか滑稽で、それでいて本人は切実です。さらに隣のブースに逃げ込んだ一人の女性と壁越しに生き残る策を話すうちに、会話はお互いの身の上話へと広がっていきます。

相手の顔も見えないまま会話を重ねる中で、彼は彼女の存在に思いを馳せ、同時に自分の内面とも向き合わされていきます。

ゾンビ騒動がなければ平穏ながら鬱屈した日々を過ごしていたであろう彼にとって、クリスマスイブという設定も大きな心理変化を際立たせる要因となっています。

世間の「負け犬」的存在への共感を呼ぶ切ない展開と、『カメラを止めるな!』を思わせる「この手があったか!」という奇抜なアイデア性が見事に噛み合った良作です。

2.「トラブルの構図」の背後に見せる人間の本音

脚本・主演を務めたダン・パーマーは、エドガー・ライト監督の初期コメディ『A Fistful of Fingers』(1995年)にも出演しており、ライト監督の作風から大きな影響を受けていることが窺えます。

監督のクリスチャン・ジェームズの他作品を振り返っても、共通する表現の芯を感じ取ることができます。

2004年の映画『Freaks Out』では、少年たちが脱獄した精神病患者を保護し「本物の連続殺人鬼」に育てようとレクチャーする奇想天外な物語を描き、登場人物たちのどこか楽しそうな本音ののぞく描写が強烈な印象を残しました。

また、2017年の『Fanged Up』では、刑務所の看守が吸血鬼だったというシチュエーションを描き、追い詰められた密室での絶望感とアイデアの冴えを見せています。

単なるホラーの恐怖やグロテスクさに留まらず、豊かなイマジネーションを発揮して「ホラー映画を作る」のではなく「人間を描く映画を作る」という姿勢が光るクリエイターといえるでしょう。


Movie Review: Stalled (Japanese Title: Benza of the Dead)

Summary: Stalled (2014), directed by Christian James and written by/starring Dan Palmer, is a brilliant British indie horror-comedy set almost entirely inside a women’s bathroom stall during a sudden zombie apocalypse on Christmas Eve. Trapped with his tools just out of reach, a mild-mannered janitor named WC must fight off bloodthirsty zombies while striking up a deep, poignant wall-to-wall conversation with another survivor hidden in an adjacent stall.

Despite its cheesy Japanese title and low-budget appearance, the film transcends standard zombie tropes by using the absurd crisis as a backdrop for a touching character study. Combining laugh-out-loud slapstick with genuine heart, Stalled delivers a claustrophobic, creative, and surprisingly emotional experience for horror enthusiasts.


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