【怖さレベル4:注意】「怖さ」がかなり具体的なレベル。 ホラーが苦手な人は「要注意」!
あるホラー小説家のもとに届いた、旧友からの不可解な手紙をきっかけに、取材半分で真相を追い始めた主人公が、やがてかつて足を踏み入れてしまった絶対の禁忌「祝山」の呪縛へと巻き込まれるさまを描いた映画『祝山』。
本作を手がけたのは、これまで数々のホラー短編で映画祭受賞を重ね、本作で待望の劇場長編デビューを果たす気鋭の映像作家・武田真悟監督。そして主役の小説家を演じるのは、傑作『残穢【ざんえ】』以来10年ぶりのホラー映画出演となる実力派俳優の橋本愛、さらに石川恋や久保田紗友ら華やかな実力派キャストが脇を固めます。
日本のホラー文学界を牽引する人気作家・加門七海が、自身の恐怖の実体験をベースに執筆した伝説的なロングセラー小説を原作とした本作。試写会では原作者自らが「あんなに怖い作品になるとは思わなかった」とコメント、太鼓判を押すほどの一級の恐怖描写に早くも期待が高まっています。
そんな本作最大の注目ポイントは、単に幽霊や怪物が襲ってくるのではない「理由の分からないまま現実が歪んでいく、理解不能な恐怖」の表現にあります。
今回は人が決して触れてはならないタブーと、じわじわと理性を侵食していく極限のサスペンスを描く、2026年邦画ホラー最注目作の見どころを紐解いていきます。
※なお、本記事には広告プロモーションが含まれます。
【概要】

あるスランプに陥った小説家が、ひょんなきっかけで禁則の地に足を踏み入れた人たちと出会うことで、大きく人生を狂わされる恐怖を活写。民俗学や呪術を題材にした作品で知られる作家・加門七海が自身の体験をもとに執筆した小説を映画化しました。
短編ホラー作品で映画祭受賞などを重ね評価を得てきた映像作家・武田真悟が脚本・監督を担当、劇場長編デビューを果たしました。主演を務めた橋本愛のほか、石川恋、久保田紗友、草川拓弥、松浦祐也、利重剛らが共演に名を連ねています。
原作:加門七海
監督・共同脚本:武田真悟
出演:橋本愛、石川恋、久保田紗友、松浦祐也、草川拓弥、船ヶ山哲、鈴木志音、玲旺菜、岡本望来、利重剛ほか
配給:S・D・P
劇場公開日:2026年6月12日(金)より新宿ピカデリーほか 全国ロードショー
【あらすじ】
人気を博しながらも、スランプに陥ったホラー小説家・鹿角南。彼女のもとに、出版社を通して中学時代の同級生である矢口朝子から一通の手紙が届きます。
そこには、彼女を中心としたグループが心霊スポットとして知られる廃墟に肝試しに訪れて以来、彼女らメンバーに異変が起きていると記されていました。新作のネタを求めていた鹿角は、矢口と再会することを決意。そしてメンバーとの対面を果たして以降、不可解な出来事に巻き込まれていきます。
そして鹿角はその現象の調査を進めるうち、一連の異変の背後には、彼らがかつて足を踏み入れた禁忌の山「祝山」の存在があることを知るのでした。
【レポート】映画『祝山』完成披露上映会レポート

本作の上映に先駆け、5月18日(月)に完成披露上映会映画が行われ、武田真悟監督と原作者の加門七海が、本作の方向性と手応えについてコメントを寄せました。
武田監督は、本作が単なる恐怖演出にとどまらず、キャスト陣の演技のぶつかり合いも大きな見どころであると語ります。
長い準備期間を経て実現した企画であり、実力派の俳優たちが揃ったことで、「怖さ」だけでなく人間の感情や関係性が浮かび上がる作品になっている点に手応えを感じている様子がうかがえます。
また、撮影現場では不可解な出来事もあったことがこぼれ話として明かされ、作品の持つ不穏な空気が現実にもにじみ出ているかのようなエピソードとして語られました。

一方、原作者の加門は、完成した映画について「雰囲気のある怖い作品になった」と評価しつつ、自身の想像を超える恐怖表現に驚きを見せます。
もともと実体験をもとにした物語が、映像化によってさらに強度を増したことに対して、素直な驚きと感謝を述べ、原作の持つ不穏さが、映画という表現によって新たなかたちで再構築されたことを感じたと語りました。
【『祝山』の感想・評価】
1.【戦慄分析】禁忌の先にある恐怖
当サイトによる怖さレベル:Lv.4.0(全編に漂うダークな雰囲気。しかし恐怖の根源はそれだけではない!)

グロテスクなビジュアル/流血:少
音響による不快感・ノイズ::あり(:不安を煽る音楽に加え、不可解な効果音)
演出分析:“何も起きない”のに怖い──持続する不安の正体
本作の恐怖は、いわゆるホラー映画に期待される「決定的な瞬間」に依存していません。むしろ本作は、不気味な効果音、暗い森の風景、廃屋といったホラーの定番的要素を丁寧に積み上げながらも、それらを“決定打”としては使わない、きわめて特異な手法を採っています。
描かれるのは、祝山に関わった人々が徐々に狂っていくさまと、それに巻き込まれていく主人公・鹿角(橋本愛)の不安です。とりわけ印象的なのは、狂気そのものよりも、それを目の当たりにする側の「理解できなさ」によって醸成される緊張感でしょう。観客は終始、不穏な空気の中に置かれ続けます。
しかし本作の真に狡猾な点は、こうした映像や音響があくまで“舞台装置”に過ぎないところにあります。作品はまず「祝山=絶対に触れてはならない禁忌」というイメージを観客の中に植え付け、その後は直接的な恐怖を提示することなく、想像力に委ねてしまうのです。
その結果、「なにかが起こる直前の緊張感」が延々と持続し続ける。これはジャンプスケアや流血表現とは対極にある、精神的な圧迫としての恐怖だといえます。
派手な恐怖演出を求める観客にとっては物足りなさを感じられるかもしれません。しかし本作が描いているのは娯楽としての恐怖ではなく、日常のすぐ裏側に潜む“人間の歪み”です。ここにあるのは、ホラーの形式を借りた、きわめて冷徹な現代社会への視線なのです。
2.【作品の批評】ホラーの形を借りた“個人的地獄”としての物語

本作は原作小説をベースにしていますが、そのアプローチは単なる映像化にとどまりません。原作にある「じわりとした怖さ」を想起させつつも、むしろ映画はそこから一歩引いてホラーというジャンルそのものから距離を取ろうとしているようにも見えます。
物語の運びや人物の配置には再構成が施されている印象があり、そのことからは製作側の明確な意図が感じられます。もし純粋に「怖がらせること」を主眼に置くのであれば、より直接的な展開もあり得たはずですが、本作はあえてそうした手法を選んでいません。
特に印象的なのは、祝山に関わった三人の“狂い方”です。彼らは単なる恐怖の対象というよりも、主人公・鹿角の人生に侵入してくる“ノイズ”のように描かれており、その効果で本作は単なる「呪いの伝播」を描くエンタメホラーというよりも、一人の女性の過去と現在が交錯する、きわめてパーソナルな地獄へと軸足を移しているように感じられます。
ここで重要になるのが、主演を務めた橋本愛の存在です。彼女は単なる“怯えるヒロイン”ではなく、不条理な状況を静かに受け止め続ける観測者として画面に立ち続けます。
例えば近年の作品でいえば、2025年公開の映画『リライト』。この作品でも見せた彼女ならではの視線があるからこそ、直接的な恐怖が描かれなくても、観客は「なにかがおかしい」という感覚を増幅させてしまうのです。
彼女の持つ冷徹さと脆さが同居した佇まいは、本作の「決定打がないのに緊張が持続する」という異様な空気を支える中核となっています。
3.【深掘り考察】これは本当に“怪異”?「怪異」なき怪異
3.1 承認欲求が生み出す“現代的な呪い”

本作において、超常的な存在は明確には描かれません。それにもかかわらず恐怖が成立している点は非常に興味深いところです。
祝山に行った人々が狂っていくさまは、どこか現実の光景と重なります。
著名人の失言やスキャンダルに群がり、正義を振りかざしながら他者を追い詰めていく群衆。とりわけ、鹿角に執着し続ける彼らの姿は、現代のSNSにおける“粘着的な攻撃性”そのものに見え、その構造は、まさに祝山の“呪い”と非常によく似ています。

つまり本作が描いているのは、超常現象ではなく「承認欲求が暴走した人間」の姿ではないか、という読みが可能です。
もしそうだとすれば、本作の恐怖は外部から訪れるものではなく、私たち自身の内側にすでに存在していることになります。この事実こそが、最も背筋の冷えるポイントでしょう。
3.2 改変がもたらす“私的な因縁”の強化

本作では、出来事の配置や人物関係に一定の再構成が施されているように見えます。
とりわけ、矢口という人物と主人公・鹿角との関係性は、物語全体の印象を左右する重要な要素として強調されています。
この関係性が浮かび上がることで、物語は単なる怪談的な構造から一歩踏み込み、「どこかの誰かの話」ではなく、鹿角自身の過去や記憶に強く結びついた出来事として立ち上がってきます。

もし本作がより俯瞰的な視点にとどまっていれば、純粋なホラーとして機能していた可能性もあるでしょう。
しかし本作は、あえて主人公の内面に深く入り込む構造を取ることで、恐怖の質を変化させています。結果として、『祝山』は単なる怪異譚ではなく、個人的な因縁や記憶の重なりとして再編された物語として提示されているように感じられます。
それは、原作に内在する要素を別の角度から掘り下げたアプローチとも受け取れるでしょう。
こちらも是非!
不穏な空気感の中、その裏に隠れた、メディアを通して描かれる社会の闇。
主人公が多くの注目を浴び、支持と非難という両方を得るその光景を描いた『廃用身』の物語に見える闇は、本作の登場人物が翻弄される「なにか」の存在に通ずるものも感じられる。
前作『きさらぎ駅』で生還した主人公が、メディアからの非難を受ける場面からはじまるこの物語。その結末は…当事者に群がる社会の闇、そしてあまりにも「救いのない」結末が、本作の描く暗部に通じる。
【次回の『公開前レビュー』】
次回は作品『プリティ・クレイジー 悪魔が引っ越してきた』をレビューします。

この作品は、大ヒット作『EXIT』のイ・サングン監督が放つ韓国発の“悪魔憑依”ラブコメディ。当メディアで扱う純粋なホラー作品ではありませんが、「悪魔」「憑物(つきもの)」というホラーファンに馴染み深い要素に着目し、今回はあえて【番外編】として本作をご紹介します。
ヒロインのソンジ(イム・ユナ)は、昼間は聡明で愛らしいパン職人。しかし深夜2時を迎えると、内に潜む凶暴な「悪魔」へと変貌を遂げてしまいます。この奇妙な呪いを知った青年ギルグ(アン・ボヒョン)は、彼女の父親から「夜の悪魔をもてなす」という命がけ(?)の監視役を頼まれることに……。
恐怖の対象であるはずの悪魔が、なぜかキュートで愛おしく見えてくるのが本作の最大の見どころ。恐ろしい異形のホラーとは一味違う、笑ってときめく「新感覚の憑依劇」です。普段ホラー映画で緊迫感を味わっている皆さんも、たまには趣向を変えて、このおかしな悪魔の虜になってみてはいかがでしょうか?
当サイトならではの深堀考察に是非ご期待ください!
English Summary
Title: The Mountain (Iwaiyama) Review: A Chilling J-Horror Metaphor for the Toxic Urge of Modern Social Recognition
Summary: Based on Nanami Kamon’s legendary horror novel rooted in her own eerie experiences, Shingo Takeda’s feature debut The Mountain (Iwaiyama) subverts expectations by stepping away from traditional jump scares. The film chronicles a horror novelist, Minami Kazuno (played with a chilling yet fragile intensity by Ai Hashimoto), who gets drawn into a curse after her former classmates disturb a forbidden mountain.
Rather than relying on visceral gore, Takeda masterfully forces the audience’s imagination to complete the horror, maintaining an agonizing, invisible tension throughout. The film’s true brilliance lies in its sharp socio-political commentary: the cursed individuals who obsessively stalk and torment the protagonist mirror the toxic, parasitic nature of modern social media mobs who swarm celebrities out of a twisted desire for recognition. By shifting from a mere campfire ghost story to a highly personal, psychological hell, The Mountain serves as a grim and unforgiving critique of modern human darkness, proving that the most terrifying curses are the ones brewing within ourselves.
『祝山』の不気味な余韻を、今夜さらに増幅させたいなら……
さらにこの物語にも共通する「不安感」「閉塞感」「老い」などの恐怖的要素を味わうなら。
1)『残穢【ざんえ】―住んではいけない部屋―』(2016年)
「『祝山』で橋本愛が見せた、あの不穏な空気を受け止める演技。その原点とも言えるのが本作です。『土地の記憶』が連鎖する恐怖は、本作の禁忌に通じるものがあります。」

―住んではいけない部屋―』
(Amazon Prime Video)
2)『来る』(2018年)
「『祝山』が描いた、承認欲求や人間の内面の醜悪さが怪異を呼び寄せる構造。その極彩色版とも言えるのが本作です。崩壊していく家族と、正体不明の恐怖の対比に圧倒されます。」

(Amazon Prime Video)
3)『ガンニバル』(ドラマシリーズ)
もし『祝山』の持つ、逃げ場のない村社会の狂気や、踏み込んではいけない聖域の恐怖をもっと長く、深く味わいたいなら、この作品は避けて通れません。
4)『変な家』(2024年)
『祝山』が示したSNS的な粘着質さ。デジタルな現代において、間取りやネットの噂から『見つけてはいけない真実』が浮かび上がる恐怖を地続きで体験したい方に。
5)『祝山』(書籍)
本作の原作小説。書籍ならではの独特な雰囲気は多くの注目を集めており、加門七海ならではの世界観を味わえる最適なメディアであります。
配信で楽しむなら、こちらが最短ルート。
(※30日間の無料体験なら、「とてつもない恐怖の体験」がし放題!















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